「糊は貼るもの」だけじゃなーい!
大抵の大人の常識から言うと、糊は何かを接着するもの。ですが、はじめて触る子ども達にとって、何かを貼るという前にその感触が面白い!
大人にとっては、用途以外(貼る以外)の目的で糊を使う事をとてももったいなく感じてしまうのですが、ちょっと広い目で見てみると、彼らは、ネチャネチャで遊ぶことで、色んな指の感触を覚え、こういう性質のものはどう扱えば良いのかを学んでいるのです。
何事も、何度も経験することで物事の性質が理解できて、使いこなせるようになるものです。なのに、なぜかアート系の事って、そんなに経験もしていないのに(なぜなら、もったいないと思われるから)、できることを求められます。
それってなんか違うような。。。九九も漢字も何度も何度もやって覚えたはず。ハサミだって糊だって、絵の具だってクレヨンだって何度も何度も使わなきゃちゃんと使う事なんてできないと思うんです。
のりを紙一杯にのばすだけでも経験
幼稚園での活動で、自由に糊や紙を使っていい環境を作っています。春が始まると、初めて糊を触った子ども達による「糊を紙一杯に広げる」遊びが流行ります。
はじめて触るフエキ糊、まずは感触をじっくり研究します。紙の上に、たっぷり山のようにのせてみたり、どこまで薄くのばせるかを試してみたり。大人はすぐに貼ることをイメージしますが、彼らは使いこなせるようになるまで実験を繰り返します。 紙全面に糊を広げ実験が終了したら、満面の笑顔で「できた!」と教えてくれます。
少しもったいない気もしますが、上手に使いこなすようになります。 実験が終われば飽きてしまうので、そうなればただの道具になります。しばらくすると、糊をのばすだけの遊びはやらなくなり、色んなものを貼って作る遊びに移行します。
この行為を「もったいない!やめなさい!」ですぐに止めてしまうとどうなるでしょうか?トロトロしたものを伸ばす感覚や、糊を貼る時の量の調整、つけすぎるとなかなか乾かない、紙がブヨブヨになってちぎれる、そんな素材の性質を知ることはできないでしょう。
成長すれば、自然と身につく能力なのでは?と思う人もいらっしゃるかと思いますが、私の感覚としてはそうは思えません。小学生になっても、こういう遊びをしたことがない子は好きなだけ自由に使っていい糊を目の前にすると同じように広げて遊ぶ子がいます。「糊は貼るもの」とわかっているようでも、糊の量が多すぎる、わざと多めにして遊んでる、そんな光景をよく目にします。真面目に貼ろうとしている子でも、経験が少ないと糊の量を調節することに苦戦します。
これは以前に書いた刃物の話にも通じますが、大人が「もったいない」「こうせねばならない」と言う理由で、子どもの遊びを奪い、経験を奪った結果、子どもがあらゆるものに対応する力が低下しているように思えてならないのです。
それでも「もったいない」と思うのなら
それでも、大人の眼には糊を広げるだけの行為は「もったいない」と映るでしょう。意図的に子ども達に経験させてあげているつもりでも周囲から「もったいない」と思われているんだろうなぁ、、、となんだかやるせない気持ちにもなるでしょう。
そこで、考えました!糊に色を付けるんです。
そうすれば、絵の具になる。絵を描くという行為になったとたん、同じ糊を使っているのに、とたんにもったいなくないと感じる。
大人の感覚だけの問題だと思いますが…。
- でんぷんのり(フエキのり)
- 水彩えのぐ
- 手拭きタオル
- 小皿、肉トレー、卵のパックなど
- 綿棒など
- 画用紙
色付きのりを作る
やり方は簡単です。でんぷん糊に絵の具を混ぜるだけ。あとは、指で好きなようにやればいいだけです。思う存分ねちゃねちゃの感覚を楽しんでもらう。ネチャネチャの感覚からいろんなものを学び取ってもらう。幼稚園の子どもはフエキのりそのままでものばせるようでしたが、2,3歳の子どもは少し力が弱いのか、上手く伸ばせなかったので、少し水を加えました。
色がついているので、ネチャネチャで遊んでいるうちに、何か模様のようなものが出来上がってきます。色合いや無造作に引いた線がおもしろい作品となりました。
いろんな色を混ぜることで子ども達にとっても色の勉強にもなる。全部混ぜてしまって汚い色になるのも経験です。下の写真は、全部混ぜて「黒になったー!」と嬉しそうでした。
好き嫌いには対応してあげよう
子どもによっては、手がネチャネチャになるのを嫌がる子もいます。特に赤ちゃんを少し卒業したくらいの小さい子どもは、警戒心も高く、手先が汚れるのを嫌がる子も多いです。2,3歳になってくるとやっているうちに「これくらいなら大丈夫。おもしろい」とダイナミックになる子もいます。
もちろん性格もありますから、それぞれに合わせながら無理強いせず楽しく遊んでもらえればと思います。綿棒などを用意しても良いと思います。